住宅政策がストック重視へとシフトする中、「住宅履歴書」作成の制度化に向けた動きが本格化している。自民党は一昨年5月、長寿命住宅社会の形成を支援する「200年住宅ビジョン」の中で、住宅履歴書(家歴書)作成の制度化へ向けた基盤作りをスタートさせた。東京都ではすでに9年前から、「東京構想2000」の中で中古住宅の住宅履歴書を整備する方針を打ち出していたが、ここへ来てようやく、国を挙げて本腰を入れ始めた。そこで、動き始めた制度の中身や背景を振り返るとともに、住宅履歴書作成の手引きも紹介する。
■マンションにも「履歴書」が求められる時代に 住宅履歴書(家歴書)とは、読んで字のごとく住宅の修繕履歴あるいは定期点検の結果などを記録した履歴簿のことをいう。考え方そのものは決して目新しいものではなく、これまでも多くのマンションが独自に作成、保管してきた。通常、役員は1〜2年程度ごとに交代してしまい、また、一定年数の経過したマンションでは居住者の入れ替わりもある。そのため、どうしても過去の情報が偏在あるいは消滅してしまう難点があるため、記録として残すことで、誰もがいつでも履歴情報を共有できるようにする狙いだ。
最近のマンションでは、管理組合専用のHPを立ち上げる動きが増えている。居住者や遠方に住む管理組合員(オーナー)だけが、ログインできる仕組みで、マンションの管理情報や意見交換、駐車場や宿泊施設などの施設予約等にも応用している。
(例:ASPマンションコミュニティサイト「collabo」) こういったマンションでは、管理会社からの修繕履歴報告、管理書類関係などを電子ファイルとして保存している。電子ファイルで保存し、共有しておけば、紛失の危険性もなくなり、編集なども簡単に出来るため、理事会役員の引継ぎにも便利になるというわけだ。
■履歴情報を一元化することで、安全・安心なマンション環境を整備する このように、すでに普及しているともいえる住宅履歴書。そうであれば、改めて住宅履歴書に注目する必要はないようにも思える。しかし、この時期に再び脚光を浴びるようになったのは、06年6月に施行された「住生活基本法」の誕生と大きく関係している。同法には「将来世代に承継できる良質な住宅ストックと良好な居住環境の形成」という基本理念が掲げられており、良質な住宅ストックを普及させるためには、住宅履歴書の存在が必要不可欠となるのだ。自民党住宅土地調査会は、住宅履歴書の制度化に関する提言をまとめ、政府の「骨太方針2007」に反映させている。根底には“ストック重視社会”の基盤整備を進めたい狙いがあり、まさに、住宅履歴書が日本の住宅政策の根幹を担おうとしている印象だ。
さらに、マンションでは、耐震強度偽装事件に始まり、エレベーターやガス湯沸かし器による中毒事故まで、日常生活の安全を脅かしかねない騒動が頻発したことも大きく関係している。良好な居住環境を実現するには、日常に潜む「危険」に対しても危機管理が求められる。そこで国土交通省は、従来からあるマイホーム自体の改修履歴にとどまらず、設備機器の点検結果に関するデータも含めた情報を蓄積し、データベース化する計画を打ち出した。
具体的には、新築時の設計図面から耐震診断・リフォームといった改築や修繕、また、各種点検情報を蓄積するほか、さらには湯沸かし器や火災警報器・エレベーターなど設備機器の製造番号や修理記録の情報もデータベース化し、欠陥製品が発見された際の回収促進に役立てようとしている。メーカーだけにすべての責任を押し付けず、国を挙げて万全を期す考えだ。
■危機管理対策として、住宅履歴書の存在が欠かせなくなる 本来、修繕履歴を作成する意味は、管理組合が過去の工事履歴を振り返り、間近に予定される修繕工事などの参考資料とするのが目的だった。「過去」を回顧することで、「現在」に役立てようとしたわけだ。ところが、これからは「未来」に向けて役立てようという流れに変わりつつある。「もし、トラブルが発生したら…」という将来の不確定要因に対し、事前策を講じることで再発防止につなげる狙いだ。
このように、これからは住宅履歴書が「証明書」に似た性格を持ち合わせるようになり、マイホームを“客観評価”する有力な判断材料となることが予想される。将来のリフォーム時や売却時に、マンションの性能や評価証明になり得るからだ。住宅履歴書の発想(原点)そのものは今も昔も変わらないが、情報の使い方を変えただけで、その効果は未来へとつながることになる。それだけに、住宅履歴書を作成していない管理組合は、今からでも遅くない。以下を参考に、独自の履歴簿を作成するようにするといいだろう。今後、住宅履歴書がマイホームの資産価値を左右する日はそう遠くない。
その際にポイントとなるのが、居住者がいつでも簡単に履歴書を見れる仕組みを構築することだ。
その1つのアイデアとして、先程紹介した
マンション管理システム「collabo」は大いに活用できよう。
■マンション共用部分に関する修繕履歴として記録に残したい項目の一例 修繕部位 修繕内容
屋上防水:屋根露出防水や屋根アスファルト防水コンクリート押さえの更新や補修、屋根パラペット塗膜防水の更新など
外壁や床:外壁タイルのクリーニングや補修、シーリング(目地)の打替、バルコニー床や廊下床、防水更新など
鉄部など:屋上金物・バルコニー・廊下・外階段などの塗装、住戸玄関扉や共用扉の塗装など
金物・扉類:集合ポストの取り換え、バルコニーの避難ハッチや物干し金物、金属手すりの取り換え、面格子や玄関扉・アルミサッシの取り換えなど
給水設備:共用給水管の更生・更新、受水槽や高置水槽・給水ポンプの取り換えなど
排水設備:共用排水管の更生・更新
ガス設備:ガス管の更新
電気設備:分電盤類および電気配線の取り換え、屋外および屋内照明器具の取り換え、テレビアンテナ・テレビケーブル・分配器の取り換え、オートロックなど防犯装置の補修など
消防設備:消火管の更生・更新、消火栓ポンプの取り換え、自動火災報知機の配線および受信盤の取り換えなど
外 溝:標識類の取り換え、遊具などの取り換え、自転車置き場の補修など
エレベーター設備:エレベーターかご内装の改修、エレベーター本体の全面更新など
機械式駐車場:塗装、パレット等の補修など
(参考資料)公庫マンション維持管理ガイドブック
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